教育学部

「教育フォーラム2017」を開催しました

2017.11.11

教育フォーラム2017 ~小学校英語の今とこれから~

「小学校英語の今とこれから」と題して教育学部主催の教育フォーラムを開催しました。
小学校では、外国語が高学年で教科になり、今までの外国語活動は中学年で実施されるようになります。今後どのように小学校で外国語(英語)を扱ったらいいのかについて、教育現場では様々な課題が山積しています。

それらの課題をできる限り解消しようと岐阜県教育委員会の松川禮子教育長の御講演に続き、高山市立東小学校の岡崎先生から小学校での実践のご報告を頂き、久埜百合先生の東小学校でのご実践をビデオ視聴しました。
さらに、久埜先生には中部学院大学教育学部の学生相手に具体的な指導法を見せて頂きました。

その後、参加していただきましたフロアの皆様にグループ意見交流をしていただいた後、コメンテーターの岐阜大学巽先生や岐阜県教育委員会の山田先生に具体的なご示唆を頂きました。

松川禮子教育長
松川禮子教育長による基調講演

新井先生
コーディネーターの新井先生

岡崎先生
高山市立東小学校の岡崎先生

久埜百合先生
久埜百合先生

久埜先生の授業の様子のスライド
高山市立東小学校での久埜先生の授業

参加者の様子
現場の先生方はもちろん、本学学生や岐阜大学の学生など多数参加していただけました

巽先生
コメンテーターの岐阜大学 巽先生

岐阜県教育委員会山田先生
コメンテーターの岐阜県教育委員会 山田先生

学生とやりとりする久埜先生
学生と一緒に英語でやりとりする久埜先生

服部先生
コーディネーターの服部先生

グループ意見交流
活発なグループ意見交流

片桐副学長
片桐副学長からのお礼の言葉

アンケートによる質問と回答

終了後のアンケートで参加者より多くのご質問をいただきました。
講師より回答をいただきましたので紹介いたします。

どうしても一斉指導だと注意が散ってしまう子や不確かさに耐えられず、落ち込む子どももいます。どのような工夫が必要ですか。

回答:久埜百合 先生

「定着」と一言で言いますが、6年生の3月までに「英語の何を定着させておくべきか」を考えると、大変難しい問題にぶつかります。授業で指導計画通りの内容を基に、子どもと英語を使い合い、次の授業でも間違えずに活動できる状態にまで習熟が進んでいる、ということを「定着」と考えると、扱った英文や語彙を覚えさせることになります。

教えたことを記憶させる「定着」だけではなく、使い合った英文を間違えずに使い、さらにその文型を基にして、主体的に自分の考えを知っている単語を使って伝えることができるようになることまでを求めるのでしょうか。この点を、指導するもの同士が確認しておく必要があると思います。指導者が英語を聞かせること=インプットに成功すれば、これは「聞く力」の習熟が進んでいることです。その上で、子どもが英語を使い始めるアウトプットが始まります。でも、子どもの発話は、最初はうまくいきません。うまくいかないところを修正させて、だんだんに正しいアウトプットにつながっていくためには、長い時間をかけて、それに似た表現活動を経験させていく必要があります。授業で経験させた英語が「定着」した、と言えるのは、自分で考えて、正しい発話を繰り返せるようになった習熟の状態だと考えます。でも、中学の英語でも週当たり50分授業4回で「定着」までに習熟させるには、先生方が大変ご苦労を重ねておられます。小学校で英語に触れる時間はまだまだ少なく、限られた英語表現を無理やり覚えさせるような授業になりがちです。間違った英語らしくない表現の癖が染みつかないように、アウトプットをさせる段階で、十分に注意することが必要です。

授業で言わせようとして聞かせた英語を、覚えさせて、その通りに言えることが「定着」だとすると、英語で伝え合う楽しい英語の音より、言わせる英文に不自然なリズムや抑揚をつけ、決められたジェスチャーで発話をさせることを強いる指導に陥ることがあります。その結果、英語らしい音の発話からずれて、習熟が遅れることにもなりがちです。英語らしい発話を獲得するのには、時間がかかります。その場だけの「定着」を求めず、子どもが母語を身につけてきたのと同じように、時間をかけて、多量のインプットを与えながら、子どもが生来持っている言語習得能力を発揮できるように、正しいインプットを与え続け、子どもの習熟をあたたかく見守っていきましょう。

小学校教育における「英語の定着」についてどのようにお考えですか。インプットによって「わかる」ことと、アウトプットによる「定着」のつながりが難しいと感じています。

回答:久埜百合 先生

子どもが蓄えている外来語の中には英語に由来するものが1000語以上あります。どの子も知っている、banana, lion, taxiなど、子どもが思いつく単語を使って発話しやすい活動で、誰もが何か言いたくなる、クラスの子ども全員を巻き込む活動で授業を始める、というのはどうでしょうか。

通学途中に目にしたもので、英語で言えるものを言っていく、という活動は、友だちが言う単語を聞き漏らすまい、と思って聞くことにも集中します。子どもが自然にルールを作って、友だちが言った単語は使ってはいけない、などと、真剣味がましていきます。注意して英語を聞き、自分で思いついた英語で発話しよう、という気持ちが高まります。

子どもが知っていて、発音できる果物や料理のカードをたくさん用意して、その中に、食べられないもの(動物、文房具など)を少し混ぜておきます。食べられるカードを先生が見せた時だけ言う、食べられないものを言ったらアウト!でもつられてDesk! Monkey! と言ってしまう、みんなで間違えて笑い合う、というのは如何ですか。全員で言うので、英語の音に抵抗のある子どもも活動に参加しやすいと思います。 指導計画上の決まった表現を教える、というとき、表現内容になじまない子どもがいることもあります。誰もが参加できる活動を用意して、みんなで英語を使い合う活動を考えたいですね。

どうしても「わからない」という状況に子どもがはまってしまい、授業が行き詰まりそうな時は、どうしたらよいでしょうか。

回答:久埜百合 先生

子どもの目が空を泳ぎはじめ、体がくねくねと動き出した時、「分からない!」という発信を送り始めています。これに気が付いたときは、大急ぎで、一歩前に戻ることです。そして、できることなら、その子に近寄って、その子どもが対応できる内容で話しかけてみましょう。その子が答えたくなる質問で、コンタクトを濃くしましょう。

子どもが安心感をもって、授業に参加していることが、すべてに先立ちます。分からない!という状況は、とても不安なものです。また、子どもが分からないことをいつも訴えることができるようにしておくことも大事です。教えられたときに、なぜそうなるのか、と考え込む子どももいます。タイミングを計って、繰り返して、理解が深まっていくことを確認しましょう。

Teacher Talkを始めたいと思う先生が、まず初めの一歩を踏み出す時に大切にしたいことはなんですか。

回答:久埜百合 先生

教室英語というと思いつくのがStand up. Sit down.では、子どもとのコトバのやり取りが生まれませんね。命令に従わせているだけでもいいのですが、やはり子どもとのやり取りを深めることで、Teacher Talkの実感がわいてきます。

一度に複数の文を使わなければならない内容は避けます。1文で子どもと使い合える場面を考えましょう。ご自分の中学時代、最初に出会った英文を思い出して、同じ文例で話かけてみましょう。子どもの机の上にある教科書やノートは好材料です。Is this your book? Oh, this is his(隣の子どもを指して)book.1種類で2,3回授業を続けると2種類に増やしたくなります。子どもの衣服を指して、Is this pink? Yes. Is this green? No? Oh, it is yellow green. 子どもは結構色の言い方にはやかましいです。こんな他愛のない、簡単なことから始めましょう。

英語らしい抑揚や発音が気になる方には、子どもに英語で語り掛けている音源のモデルを見つけて、何度でも聞き続けることをお勧めします。その声のトーンが、だんだんにこちらの体に乗り移ってきます。私もこれを続けています。

全体指導をしていて、反応が返ってくるのが一部であったり、いつも同じ子どもばかりだったとき、どのような活動を、どのようなタイミングで仕組んだらよいでしょうか。

回答:久埜百合 先生

物わかりの早い子、いつも賑やかな子、家族に年上の子がいて英語のことが家庭でも話題になる、あるいは、英語教室に行っている、など、条件はまちまちです。この子どもたちのいろいろな背景については、担任の先生はお分かりになると思います。どの子にも、同じことを同じ程度にさせようとしても、どの教科でも習熟の差はあります。出遅れている子どもに、どう手を差し伸べるか、授業で一番気になるところです。

いわゆる"できる子”を無視することも考えものです。授業では、誰もが必ず一言英語で声を出す活動(英語の知識に関係なく)を授業の初めに試しましょう。朝食で食べてきたもの(I had miso soup. など)、教室内にあるもの(That is a clock. など)、通学路で目にしたもの(I saw a bus.など)を英語の単語だけでもいいので、言ってみるとか、みんなが歌える歌を歌う、というように、全員ができるもので英語気分に入っていきます。その後で授業の本体に入り、問いかけて答えるように促したり、活動に必要な英文を練習するときは、クラスを2分割、4分割にして、数名で一緒にアウトプットさせる、どのグループから聞こえてきた英語がよかった、などと伝えて、子どもに努力を促す、みんなができるようになって嬉しい、と伝えたいです。また、このあたりで、時には個別の子どもを指名して答えさせるとよいと思います。

正確さを高めていくためには?

回答:久埜百合 先生

子ども自身が正確さを求めていて、自分は友だちのようにうまく言えていない、と気付いていることがあります。発話させる場合でしたら、どこかうまくいかないところのある人、もうちょっと練習したいところのある人はいませんか、と声をかけて挙手をしてもらい、その不安な気持ちを指導者も「そう、そこむずかしいね、同感!」と伝えて、もう一度全員で練習をしましょう。難しいところを教えてくれて、ありがとう、と伝えるのもいいと思います。

こういう問いかけは、日本語で行います。不安なところは放っておかない、という癖をつけます。みんなで上手になろうね、という気持ちが伝わり、練習を続けやすくなります。

それにつけても、不正確になってしまう理由は何でしょうか。聞かせ方に不十分なところはなかったか、不正確な発話を聞き逃したり、見逃したりしていなかったか、授業者としての反省の種は尽きません。気を付けたいポイントをはっきり伝えておく必要もあります。ここで要注意!練習する英文の意味を、日本語に訳して伝えることではありません。意味の理解を深めるのは、英語を聞かせ続ける間に、図解したり、ジェスチャーで伝えたり、いろいろな方法がありますが、日本語を使うことはよくありません。それは、いつも日本語で考えてから英語を使う癖がつきやすく、英語の語順とは違う日本語の語順での思考回路ができてしまうので、咄嗟に英語が出てこない状況を創り出してしまうからです。

子どもが不正確になりがちな表現を、次回、次々回の授業で、折に触れて復習することも大切です。大人でさえ完璧に間違えない英語を操るのは大変です。自主的な繰り返し練習以外に、正確な英語にたどり着く方法はありませんね。

教師の英語力は、どのくらい、どのような範囲で求められているか。

回答:久埜百合 先生

教師の英語力は、高い方がいい、とも言えますが、英語運用能力が高ければ指導力もある、とは言い切れません。英語に不安があっても使用する教材・視聴覚教材がしっかりしていれば、子どもは、先生の英語と比較しながら「英語らしい英語はこれだ!」と判断して、選択的に真似をしていきます。松川禮子先生とご一緒した『えいごリアン2000~2001』は、そのよい例で、あの番組で、多くの先生方の授業をサポートすることができました。

ということは、平常の、先生の授業力が物をいう、ということになります。子どもと一緒に番組を見て楽しみ、マイケルたちの英語を真似してみたり、野菜の名前が分からない時に、辞書で調べて、先生が「わかった!}とうれしそうな顔を子どもたちに見せるのも、大事な指導です。
英語は英語で教える、ということが盛んに言われていますが、無理をして不自然な英語で授業を進めるのは考えものです。正しい文例を聞かせるために音源に頼ることは、いいことだと思います。音楽観賞するためにDVDなどを使うのと同じだと考えています。

どの学年でも、「担任による」Small Talk から取り組めば良いのでしょうか。

回答:山田誠志 先生

指導体制は各学校で決めらます。ご自身の学校が学級担任による指導体制であれば、学級担任がSmall Talk を行うことになります。新教材のSmall Talkは、平易な英語を使って行われることが想定されています。やり取り例が文科省HPに掲載されていますので参考にされるとよいと思います。そして、英語を使って対話するということを必要以上に大上段に構えることなく、楽しもうとする気持ちをもってくださればと思います。

“ I want to go to Italy ”の単元では、どうしても日本語で考え、英語に直す・覚える、という思考の流れになりがちです。このように日本語→英語という思考パターンもよいのでしょうか。

回答:山田誠志 先生

既に実践しておられることとは思いますが、アウトプットを見通した意図的なインプットを行うことが大切だと考えます。その際、場面や状況の中で英語表現を聞いたり使わせたりする指導が必要です。加えて、言いたいことをそのまま英語で言うことが難しい場合は既習の英語表現で言い換えさせることも大切な指導です。

小学校英語の教科化に伴い、小学校英語における「正確さ」をどこまで求めればよいのでしょうか。また、中学校での即興性と正確性は、どの程度のレベルまで求めていけばよいのでしょうか。

回答:山田誠志 先生

少なくとも正しい語順で言うことができることは求めて指導することが必要です。ただ、このことは、「少しずつ」できるようになるものだという構えをもち、長いスパンで日々の授業を行ってくださることが結果的に児童の大きな成長につながるものと信じます。

中学校においても、「話すこと」の言語活動においては基本的には同じです。一方、「書くこと」においては、求めるべき「正確さ」の基準は高くなります。その際、生徒が自らの誤りを自分で気付いて修正するという学習に取り組ませることが大切になると考えます。即興性は、その名のとおりです。準備を一切させずに話をすることができるようにすることまでを求めます。ただし、身近な事柄についてやり取りさせるなど、取り扱う話題には十分な留意が必要と考えます。

続きの回答は5月頃に掲載予定です。

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