「現代マネジメント研究」第4回 濱島秀行氏 講義

2023年度 中部学院大学・シティカレッジ関・各務原公開講座

第4回 「こころをつなぐ音楽療法」

バイオリニスト・県音楽療法士
濱島 秀行 氏

バイオリニストで県音楽療法士の濱島秀行氏の「現代マネジメント研究」公開講座 バイオリニストで県音楽療法士の濱島秀行氏の「現代マネジメント研究」公開講座

第4回「現代マネジメント研究」公開講座は5月22日、バイオリニストで県音楽療法士として活躍する濱島秀行氏を招いて開かれました。学生約120人と一般市民ら30人が参加し、音楽を通じた濱島氏の福祉の実践活動に耳を傾けるとともに、素晴らしいバイオリンの演奏を堪能しました。
濱島氏は2002年に本学の人間福祉学部人間福祉学科を卒業しました。在学当時から音楽療法や福祉の世界に興味を持ち、岐阜県音楽療法研究所で音楽療法士の資格を取得。卒業後は認知症のデイケア施設で勤務する傍ら、バイオリニストとして演奏活動を重ね、クラシック音楽やj-pop、演歌、ジャズなど幅広い音楽演奏のライブにも参加しています。
講演で濱島氏は「この大学を卒業してもう二十一年が過ぎました。音楽療法を通じて皆さんにメッセージを伝えたい。皆さんも普段の生活で音楽の力を感じることがあるでしょう。カラオケで熱唱して爽快感を味わったり、ドラマや映画の音楽に心を奪われたり、そんな経験があるでしょう。それが音楽の生理的、心理的、社会的な効果です。そうした音楽の力をうまく利用して、心身の健康の回復や生活の質向上を図るのが音楽療法です」と分かりやすく説明しました。
これまでの足跡にも触れ、「学生時代に中部学院大学教授の恩師が立ち上げた認知症専門のデイケア施設で五年間勤務しました。そこで重度の認知症患者と触れ合い、患者が幼少期に覚えた音楽を歌い、昔の思い出話を語る姿を見ました。笑顔や手拍子をする姿に触れて、音楽の力が無限の可能性を秘めていると感じました」と振り返りました。

フィギュアスケートの浅田真央選手で有名な「チャルダッシュ」を演奏する濱島氏 フィギュアスケートの浅田真央選手で有名な「チャルダッシュ」を演奏する濱島氏

音楽療法には三つの作用があると言います。まず生理的には音楽を聴いて体を動かし、歌うことで心肺機能を使い、呼吸や血行にいい影響があります。心理的作用として音楽は心や感情に働きかけ、自分に合った音楽を聴くことで気持ちを落ち着かせることができます。三つ目の社会的作用では、施設医療で患者同士がグループで演奏したり、一緒に歌うことで達成感を得られます。他者とのつながりで疎外感が軽減され、精神的な安定感を得られるといいます。
濱島氏は過去にNHKニュースで取り上げられた総合在宅医療クリニック(羽島郡岐南町)の取り組みも動画で紹介しました。認知症のお年寄りがバイオリンの伴奏で喜んで歌う姿が映され、医療スタッフとして五年間で五十人以上の在宅患者を訪問したという濱島氏は「音楽によって痛みや苦しみを忘れられる時間ができます。音楽には病気を癒やしたり、昔の記憶を呼び戻したり、ストレスを軽減する力がある。時にはコミュケーションの手段にもなります」と強調しました。台湾のテレビ局「公共電視」の取材映像では、患者が好きな美空ひばり、テレサ・テンなどの懐かしい歌謡曲を弾いて認知症のお年寄りと交流する姿も紹介されました。 

音楽療法の効果について語る濱島氏 音楽療法の効果について語る濱島氏

音楽療法で変化の見られた患者の例として、脳性麻痺で長く在宅医療を続けている男性が「春の小川」に反応したり、白血病の患者がバイオリン演奏を濱島氏から教えてもらい、バイオリンが生きる希望にもなっている例が紹介されました。また普段は目を閉じて体を動かせないダウン症の患者が濱島氏のオリジナル曲「ワタリドリノウタ」を聞き、次第に目を開いていく感動的なシーンも紹介されました。
講演の中でバイオリンのエネルギッシュな生演奏も披露。中島みゆきの「糸」、葉加瀬太郎の「情熱大陸」、モーツアルトの「トルコ行進曲」、フィギュアスケートの浅田真央さんが氷上で使って有名になった「チャルダッシュ」など多彩な楽曲を演奏しました。「トルコ行進曲」では音楽療法の体験として学生と市民に手拍子のセッションを呼びかけ、「チャルダッシュ」では難曲を鮮やかに演奏しながら片足回転や体を反らせる演技を披露して大喝采を浴びました。
濱島氏は「私にとって音楽療法とは心と心をつなぐコミュニケーション。寝たきりで言葉の出ない患者さんも笑顔や涙でコミュニケーションを返してくれる。患者さん本人だけではなく、介護で疲れた周りの家族や医療・介護スタッフにも喜んでもらえる。患者からもらう感謝の気持ちがとてもうれしく、自分の幸せや癒しにもつながっています」と話しました。最後にある患者から言われた「音楽療法はおいしいごちそうを食べているようなもの。先生が帰られた後も幸福感が残ります」という言葉を紹介し、濱島氏は「患者さんや周りの人が少しでも幸せな時間を過ごしていただけるよう心を込めてバイオリンを奏でていきたい」と結びました。
学生の質問タイムに続き、大学副学長の片桐多恵子先生が閉会のお礼の挨拶。「素晴らしいお話と演奏を聞かせてもらい、感慨無量で胸がいっぱいです。以前にも講演を聞きましたが、さらに一層いろいろな経験をされて多くの人を癒やしておられる。これからも皆さんのためにいい働きをしてください」と心温まる感謝と激励の言葉を述べ、学生と市民からも割れるような拍手が濱島氏に送られました。
 

(文責 碓井洋、写真 野口晃一郎)

バイオリンで中島みゆきの「糸」やクラシックの名曲を奏でる濱島氏 バイオリンで中島みゆきの「糸」やクラシックの名曲を奏でる濱島氏
閉会で御礼の挨拶と激励の言葉を送る片桐多恵子先生 閉会で御礼の挨拶と激励の言葉を送る片桐多恵子先生

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