2025.06.13
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「現代マネジメント研究」第4回 田代達生氏 講義
2025年度 中部学院大学・シティカレッジ関・各務原公開講座
第4回 「まちづくりは財源開発(ファンドレイジング)から」
カンダまちおこし株式会社代表取締役社長
田代 達生 氏
現代マネジメント研究第4回の公開講座は6月2日、関キャンパスで開講し、カンダまちおこし株式会社の田代達生社長が講演した。教育学部、人間福祉学部、スポーツ健康科学部、短期大学部の学生135人と一般市民28人が受講し、田代社長のユーモアを交えた実践的な「まちづくり」の講演に耳を傾けた。

田代氏は趣味としてローカルグルメ「天麩羅中華人民共和国」や「冷やしたぬきキングダム(王国)」の探索活動をしていると説明。岐阜市西柳ヶ瀬のシャッター街では「廃虚ツアー」を行い、NHKのドキュメント番組で大きく取り上げられたことを紹介し、面白いまちづくりに関わる魅力を語った。
カンダまちおこし株式会社のキーワードは「まちづくりは財源開発(ファンドレイジング)から」。起業や観光振興の分野で寄付行為を仲介して財源を作り出し、自治体と民間を連携させる接着剤の役割を果たしている。その手法はクラウドファンディング、企業版ふるさと納税マッチング、岐阜ふるさと納税ポータルなど、アイデアあふれる支援策と観光地域づくりのコンサルティングだ。
田代氏は「まちづくりには人材、財源、組織、計画の四つの要素が必要だが、最も難しいのが財源。私たちは金利も返済も必要とせず、最初の一歩を応援する財源として寄付仲介業を目指している」と話す。会社設立からまだ四年だが、2024年度はクラウドファンディングなどで五億二千百万円を調達した。また企業版ふるさと納税マッチングでは岐阜、愛知の四十六自治体と提携したという。

講演で最近のトピックスとして挙げたのは白川村の酒蔵づくり。同村はどぶろく祭りで有名だが、村内には清酒の酒蔵がなかった。このため飛騨市の渡辺酒造の協力で酒蔵作りに着手。建物と設備に約13億円かかるため、企業版ふるさと納税やクラウドファンディング型ふるさと納税を活用した。趣旨に共感した木工機械製造会社の太平製作所(小牧市)が同村と「森林づくり協定」を結び、一億円を寄付。同社を含む三社から一億千五百万円の大口寄付を成立させ、三ヶ月で四億円を集めた。
このほか支援した成功例として▽名古屋の航空部品メーカーが岐阜工業高校の航空機械工学科に実習用CAD・CAMシステム(千九百二十万円相当)を寄付▽岐阜電力株式会社が脱炭素を推進するまちとして関市に一千万円を寄付▽岐阜市で特撮怪獣映画「アユラ」の制作資金千四百万円をクラウドファンディングで調達▽高山市高根町で小学校の廃校を利用したウイスキー蒸留所「飛騨高山蒸留所」の開設を支援—などユニークな取り組みを次々に紹介した。
高島屋が撤退した岐阜市柳ヶ瀬についても前向きの姿勢は崩さない。「寂しいという声もあるが、いま柳ヶ瀬は最もチャンスがあるのでは。高島屋にあった飲食店が柳ヶ瀬に残り、クラウドファンディングで三百七十万円が集まった。西柳ヶ瀬の廃虚ツアーは一人一万円の参加費だが、定員四十人が一日で埋まった」と紹介した。
田代氏は「まちづくりの財源開発の業界標準を作りたい。企業版ふるさと納税のビジネスモデルを確立する。会社の利益を上げながら、まちの課題解決の事業も行うローカルゼブラ企業も応援していきたい」と述べ、「公益を民が担う」のキャッチフレーズを掲げてまちづくりの意気込みを語った。
(文責・碓井洋 写真・野尻信一郎、林賢一)

