「現代マネジメント研究」第4回 丹藤昌治氏 講義

2024年度 中部学院大学・シティカレッジ関・各務原公開講座

第4回 「我が国のがん対策について」

岐阜県健康福祉部長
丹藤昌治 氏

「現代マネジメント研究」第4回の公開講座は6月3日に開講し、厚生労働省の医系技官であり、岐阜県健康福祉部長を務める丹藤昌治氏が登壇。学生約100人と一般市民約30人が出席し、がん対策の最前線や丹藤氏が自ら経験したがんとの闘病に耳を傾けた。

国のがん対策推進基本計画などについて説明する岐阜県健康福祉部長の丹藤昌治氏 国のがん対策推進基本計画などについて説明する岐阜県健康福祉部長の丹藤昌治氏

丹藤氏は広島県出身で、京都大学工学部と広島大学医学部を卒業。臨床医師として働くよりも国や社会のために貢献したいとの思いを強く抱き、厚生労働省の医系技官(国家公務員)になった。国の政策の立案から決定、実施までを担い、特に医療保険制度、食の安全、労働者の健康を守る雇用政策などに取り組んだという。国の第3期がん対策推進基本計画の策定では、がん対策推進官として成立に奔走した。この基本計画は国のがん対策を進める上で全体の方向性を示す。

一般的に医系技官の仕事はあまり知られていない。丹藤氏は学生や市民にも分かりやすい例として、医師でありながら東京市長や内務大臣、関東大震災後の復興院総裁を務めた政治家・後藤新平を挙げ、医師を主役に映画やテレビドラマにもなった小説「チーム・バチスタの栄光」の登場人物にも触れた。

国のがん対策推進基本計画の全体目標については「がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんの克服を目指す」として①科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実②患者本位のがん医療の実現③尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築—を柱に掲げた。がんの要因や国内死亡率の推移を統計資料で紹介し、「日本人の2人に1人が生涯でがんになり、がんに罹患する確率は男性65・5%、女性は50・2%」「男性で多いのは前立腺、胃、大腸がん。女性は乳房、大腸、胃がんの順に多い」などと説明した。

「我が国のがん対策」をテーマに開講された現代マネジメント研究 「我が国のがん対策」をテーマに開講された現代マネジメント研究

丹藤氏は2020年7月、職場の健康診断で左肺に白い影があると指摘された。折から新型コロナ対策の仕事に奔走しており、精密検査を先延ばししていたが、同年11月のCT検査で腫瘍が確認された。初期だろうからと冷静に受け止めていたが、続く全身検査で腰椎への転移が判明し、ステージ4の進行がんと診断されたという。

同じ肺がんであっても、原因となる遺伝子はさまざまであり、対応する薬剤も異なる。最近のゲノム医療では、この遺伝子を特定し、より効果の高い治療薬を選択して患者に合った治療法を目指している。2020年夏にがんの切除手術に成功した丹藤氏も、この「分子標的薬療法」の治療を続け、2021年2月には仕事に復帰した。

丹藤氏は自らの経験を踏まえ、「がんの早期発見及びがん検診」の受診率向上を第一に訴えながらも、治療と仕事の両立支援については課題を感じている。「自分は職場にも恵まれ、幸い現役で働いている。治療経験を仕事に生かしたい」と話し、両立支援について「労働者にとっては病気を悪化させずに適切な治療を受けながら仕事を続けられる可能性が高まる。事業者にとっても貴重な人材の喪失を防ぎ、従業員のモチベーションや労働生産性の向上につながる」と力説。岐阜県のがん対策推進計画についても「患者の離職防止や再就職支援、闘病と就労のための相談窓口の利用促進など両立支援に取り組みたい」と結んだ。

聴講した学生や市民からは「普段知らない医系技官という仕事がよく分かった」「公務を続けながらご自身のがんとの闘いを聞き、頭が下がる思いだった」「がん検診の必要性がよく理解できた」などの感想が聞かれた。

                                                                                                     (文責 碓井 洋、写真 野口晃一郎)

「まずは早期発見のため、がん検診を受けてほしい」と話す丹藤氏 「まずは早期発見のため、がん検診を受けてほしい」と話す丹藤氏
自らの闘病体験を語る丹藤氏の講義に耳を傾ける学生たち 自らの闘病体験を語る丹藤氏の講義に耳を傾ける学生たち

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