「現代マネジメント研究」第4回 秋葉和人氏 講義

2022年度 中部学院大学・シティカレッジ関・各務原 公開講座

第4回「持続可能な社会とは~SDGsの考え方」

十六総合研究所代表取締役社長
秋葉 和人 氏

SDGsの背景として世界の気候変動や貧困、差別の問題について語る秋葉和人社長 SDGsの背景として世界の気候変動や貧困、差別の問題について語る秋葉和人社長

今年度の「現代マネジメント研究」第4回の公開講座が6月6日、関キャンパスで催され、十六総合研究所の秋葉和人社長がSDGsをテーマに講演しました。同講座は各界のトップリーダーを講師に招き、グローバルな視点とマネジメント能力を持つ人材の育成を目的に開催しています。教育学部、人間福祉学部、短期大学部の学生や聴講を申し込んだ一般市民ら約150人が参加しました。

秋葉社長は慶應義塾大学を卒業して十六銀行に入行。同行支店長や経営企画部長、取締役常務執行役員を経て十六総合研究所の社長に就任されました。同社は地域金融グループである十六フィナンシャルグループのシンクタンクで、地域社会や経済、産業等の調査研究や企業の課題解決支援を行っています。

「変化は私たちから起こそう」と身近な取り組みを提案する秋葉社長 「変化は私たちから起こそう」と身近な取り組みを提案する秋葉社長

SDGsとは「Sustainable Development Goals」の頭文字で、「持続可能な開発目標」の略称。環境問題(気候変動)や差別、貧困、人権問題など世界の多様な課題を各国が協力して2030年までに解決していこうという計画・目標です。2015年の国連サミットですべての加盟国が合意し、「2030アジェンダ」として17の目標と169のターゲットで構成されています。

秋葉社長は始めに太平洋の島キリバスが海面の上昇によって水没の危機にある動画を上映しました。温室効果ガスをまき散らす工業地帯、地球温暖化のために溶け始めた南極の氷、異常気象で雨が降らずに干上がる大地、強制された児童労働や極度の貧困状態—などをスライドで紹介し、気候変動が世界に深刻な影響を与えていること、十分な食事や医療を受けられず、貧しい暮らしを余儀なくされる人々が世界には大勢いることなどを指摘しました。

秋葉社長は「今の地球はサスティナブル(持続可能)な状況ではない。このままでは、将来の世代に美しい地球は残せません。持続可能な開発のために、環境保護、経済成長、そして社会的包摂(ほうせつ)、という3つの要素を調和させることが欠かせません」と述べました。

17の目標の目標1である「貧困」を例に見ると、極度の貧困状態(1日あたり1.9米ドル以下)、つまり約250円以下で暮らしている人は世界で7億960万人を数えます。うち約半数が子どもで3億5600万人。日本の全人口の約3倍の子供が極度の貧困状態で暮らしていることになります。日本においても相対的貧困率が高く貧困に無縁ではないと指摘しました。

目標5の「ジェンダー」を見ると、日本は世界156か国中120位で先進国では最低レベル。アジア諸国の中でも韓国や中国より低い結果となり、特に女性の国会議員数や男女間賃金格差、家事・子育てなどの男女差が問題とされています。

目標13の「気候変動」では、日本でもゲリラ豪雨などの異常気象が主な要因といわれ、気候変動をもたらす二酸化炭素など温室効果ガスの排出量を減らす緊急対策の必要が叫ばれています。

最新の2022年のSDGsレポートによると、日本のSDGsの達成状況は世界163か国中19位。17の目標のうち達成できたのは3目標。努力が必要な重要課題が残るのは9目標以上あり、日本はまだまだ努力すべき段階にあると言えます。 

SDGsは目標達成の主体に「企業」を置いたのが特徴で、どんなに利益を上げようと、それがSDGsに反する企業活動ではいけない。秋葉社長はパームオイルを例に経済活動が森林破壊や野生動物の絶滅危機や児童労働につながっている事例を挙げ、「海外から安く材料を仕入れるため、児童労働の恐れがある地域や企業から仕入れていた会社や企業活動は許されるものではありません」と企業の責任の重さを強調した。 SDGsは企業戦略としても重要で、身近な例として十六フィナンシャルグループが公表した「SDGs宣言」の数値目標(KPI)を説明しました。またジェンダーギャップが都会より地方に多く存在することを指摘した提言書「女子に選ばれる地方」(十六総合研究所が4月発刊)にも触れました。

講義の最後に秋葉社長は「変化は私たちから起こそうーSDGsのためにできること」として、身近にできる具体的な取り組みを提案。▽電気を節約しよう▽印刷はできるだけしない▽買い物はマイバッグで▽差別があったらとにかく声を上げようーなど、家庭、地域、学校・職場ですぐに実践できる事例を紹介しました。そして「私たちにできることは限られていますが、個人、企業、自治体・政府がともに取り組むことで世界全体が変化し、2030年の地球を今よりずっと素晴らしいものにできるはずです」と力強く呼びかけました。

講演後にお礼のあいさつを述べる江馬諭学長(右) 講演後にお礼のあいさつを述べる江馬諭学長(右)
SDGsをテーマにした講義の全景 SDGsをテーマにした講義の全景

                                                                                    (文責:碓井 洋  写真:野口晃一郎)

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