「現代マネジメント研究」第4回 根本一徹氏 講義|中部学院大学・中部学院大学短期大学部ホームページ

「現代マネジメント研究」第4回 根本一徹氏 講義

2021年度 中部学院大学・シティカレッジ各務原・関 公開講座

第4回 「消えたい気持ち。」~知ることから考える~

臨済宗妙心寺派神宮山大禅寺住職
根本 一徹 氏

講演する根本一徹氏

今年度の「現代マネジメント研究」第4回の公開講座が6月22日、各務原キャンパスで開講されました。同講座は各界のトップリーダーを講師に招き、グローバルな視点とマネジメント能力を持つ人材の育成を目的に開催しています。この日は換気や三密を防ぐなどコロナ感染症防止対策に万全を期して開講し、教育学部の学生をはじめ、聴講を希望した市民の皆様を含めて約100人が出席しました。

現代マネジメント研究講義会場の様子

根本さんは岐阜県関市の大禅寺の住職を務める傍ら、2004年から自殺防止の活動を続けています。活動の原点となっているのは、若くして経験した身近な人たちの自殺でした。小学校の時にかわいがってくれていた母の弟が亡くなり、高校生の時には中学時代の同級生が亡くなりました。そして高校のバンド仲間が卒業後に自らの命を絶ちました。「どうして彼らが死を選んだのか、その答えを探して悩み続けた」と根本さんは話します。

日本は年間約2万人が自殺し、先進国では類を見ない「自殺大国」と言われます。昨年からのコロナ禍で閉塞感が強まる中、日本では特に10代から20代の若い世代の自殺が増えています。厚労省などによると、10代、20代では対前年比で20%近く増加しているとの報告があります。コロナ禍の影響からか、日本だけでなく米国など海外でも若者の自殺は増える傾向にあります。

根本さんは年間3000人以上から相談を受けています。その経験から「皆、孤独感があり、孤独感が人を死に追いやっている」と指摘します。そして、寺で実践している疑似葬儀のワークショップ「旅立ち」を紹介しました。「旅立ち」では参加者に病魔に侵された自分を想像してもらい、大切な人、思い出、やりたい事などを書いたカードを一枚ずつ捨てます。カードは最初に12枚を用意し、死期が近づくたびに1-3枚のカードを捨てていきます。参加者は自らの内面と向き合い、死を疑似体験します。

根本さんは「寺に来る人は生きる目的が見つからず、早く死にたいという人が多い。旅立ちでは一回死んだつもりで自分の人生を俯瞰して眺めてもらう。そして死のステージが進むごとに、命の大切さ、自分にとって何が大切なのかを見つけてほしい」と話しました。

講演する根本氏

「健康経営」と言われるように、最近は企業経営者も社員が幸福に働けるような職場環境、社員のセルフケアに気を配ります。しかし、インターネット社会の進行とともにAIを活用した個人情報の解析が進み、「フィルターバブル」という言葉が生まれています。検索サイトのアルゴリズムによってフィルター(遮断する機能)が生まれ、人は自分が見たい情報しか見えなくなり、多くの情報の中でむしろ孤立感は増します。企業でもAIによる支配が進み、社員や個人の不安と分断が進んで格差を生み出します。根本さんは「現代社会ではこの不安と分断から脱出するために、人々は思い悩むのでないか」と述べ、仏陀の教えを引用しました。

仏陀の教えでは無知が最大の罪だと言います。無知によって不安が起き、もやもやした気持ちになる。無知は怒り、むさぼり、愚かさにつながる。この三つは「三毒」と呼ばれ、人を殺す毒と言われます。三毒によっていらいらが高じ、どうしたらいいか分からない、幸福を感じられない、私はこんなに頑張ったのに認められないーなどの不満や愚痴が増幅する。この三毒を退けて自殺や事故死、殺人など死のリスクを減らすためには、幸福度を高くする必要があります。

根本さんは「慈悲喜捨(じひきしゃ)」という言葉も引用しました。
「慈はいつくしむこと。悲は共に悲しむこと。喜は良いことがあれば一緒に喜ぶ。そして捨は捨てること。執着を捨て、プライドを捨てる。そうすれば悩みの見え方が変わります。人に寄り添うときは春のように。物事を学び、仕事をするときは夏のように。物を考えるときは秋のように澄んだ心で。そして自分自身に向かうときは冬のような厳しい心で」と心の在り方を諭しました。

講義では外国人監督が撮影した2本の映画(ショートムービー)も上映されました。ある英国人女性は母親を病気で亡くし、父親との関係にも思い悩んで大禅寺を訪れます。そこで他の人々とワークショップの「旅立ち」を体験し、「地平線の向こうに親の姿を見ることができ、助けられた」と心の境地を話します。オランダの監督が撮影した映画「樹海の上、浮き漂う我が心」では、自殺願望のあった3人の日本人男女が登場します。根本さんとの対話を続ける中で、3人が少しずつ頑なだった心を開いていく姿が描かれています。

根本さんは最後に学生たちに向かって「自殺者は敗北者と言われるが、誰にでも起きうることだと思います。誰にでもなる可能性はあります」と語りかけ、「幸福になりましょう。お金があるだけ、家族がいるだけでは幸福度は上がりません。周りの人を幸せにしていきましょう。心が健やかでなければ、幸福は感じられない。そのことをもう一度皆さんで見つめ直してください」と呼びかけました。

講義後、会場の市民から「福祉施設で高齢者と接しているが、コロナ禍で実際に会うこともままならない。どうしたらいいのか」という質問がありました。根本さんは「オンラインを利用して在宅で1000人以上の人から話を聞いています。オンラインで座談会や座禅もしてコミュニティの場を広げ、個別相談にも応じています」と述べ、ICTを活用して人の心をつなぐ取り組みも紹介しました。

質問をする参加者の様子
会場の様子

(文責・碓井 洋  写真 林賢一、野口晃一郎)

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