2025.07.25
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「現代マネジメント研究」第8回 富田安紀子氏 講義
2025年度 中部学院大学・シティカレッジ関・各務原公開講座
第8回 「片目で見る世界」
和太鼓奏者、視覚障害者
富田安紀子 氏

「現代マネジメント研究」第8回の公開講座は7月14日、関キャンパスで行われ、和太鼓奏者で視覚障害者の富田安紀子さんが講演した。富田さんは短期大学部の卒業生で、東京でモデルやタレントとしても活躍している。
いじめられた幼少期の過酷な体験をはじめ、障害に向き合って出演した東京パラリンピックやパリコレクションへの挑戦を語り、学生と市民ら合わせて約170人が熱心に耳を傾けた。

富田さんは小学2年生でぶどう膜炎を発病し、小学4年生の時に左目を失明。右目も進行性の弱視で、教室の黒板を双眼鏡で見たり、教科書は虫眼鏡で読んでいたが、やがて一人で歩くことも難しくなった。このため一年間の盲学校を経て、6年生で通常学級に戻ったという。
しかし、そこでは壮絶ないじめに逢った。「同級生に無視されたり、足を引っ掛けられた。プールに誘われ、足を引っ張られて溺れそうになったことも。目が見えなくなる恐怖よりも、いじめがつらくて生きていたくないと思った」と話す。「周りに訴える勇気がなくて一人で抱え込み、自分で腹部に包丁を突き立てたこともあった」と当時を振り返った。
短期大学部に入学してからは信頼できる友人に恵まれた。今でも交流が続いており、「一人の人間として自然に接してくれた。友人が人生を変えてくれた」と笑顔で語った。大学を卒業して介護福祉士として勤務していたが、二十六歳で転機が訪れる。

この年に医師の勧めで左目に義眼を入れ、人生が変わった。自分に自信を持つことができ、上京して芸能事務所に所属してモデルとして活動。四歳から始めた太鼓を生かし、東京パラリンピックの開会式では国立競技場で太鼓のパフォーマンスを披露した。また国内のミスコンテストに出場して準グランプリを受賞した。出場の理由について「病気や障害で夢をあきらめている人のために出た。視覚障害で真っすぐ歩くのが難しく、ウオーキングに最も苦労したが、自分の挑戦を伝えることで誰かの役に立ちたかった」と話した。
昨年九月にはパリコレクションに出演。ランウエーで和太鼓の演奏を披露したが、左目の義眼をあえてはずし、ありのままの姿で舞台に上がった。その経験を「世界ではコンプレックスがむしろ個性として評価されることを伝えたかった」と振り返り、「障害があるからと暗く生きるのではなく、挑戦する自分の姿を発信して悩みを抱える人に元気を送りたい」と学生に語り掛けた。
最後に大学時代の友人とともに沖縄・宮古島を訪れ、子供のころから夢見ていた満天の星を眺めたことを歌にした「星は何色」を披露。和太鼓の迫力ある演奏も披露し、会場から大きな拍手を浴びていた。


(文責・碓井 洋 写真・野尻信一郎、小林康将、林賢一)