「現代マネジメント研究」第6回 小栗幸江氏 講義

2022年度 中部学院大学・シティカレッジ関・各務原 公開講座

第6回「地域文化の灯を絶やさないために」

美濃歌舞伎博物館相生座館長・ミュージアム中仙道館長
小栗 幸江 氏

地歌舞伎の美しい衣装を紹介する小栗幸江さん 地歌舞伎の美しい衣装を紹介する小栗幸江さん

「現代マネジメント研究」第6回の公開講座が6月27日、関キャンパスであり、美濃歌舞伎博物館相生座館長の小栗幸江さんが講演しました。同講座は各界のトップリーダーを講師に招き、グローバルな視点とマネジメント能力を持つ人材の育成を目的に開講しています。教育学部、人間福祉学部、短期大学部の学生や一般市民ら約130人が参加しました。

小栗さんは東京都生まれですが、父親の克介さん(故人)の仕事の都合で瑞浪市に転居。克介さんは私費を投じて相生座を再生し、小栗さんも父親の影響で幼少期から美濃歌舞伎保存会の伝承、継承活動に携わってきました。舞台で役者を演じ、舞台監督をやり、三味線を弾き、衣装の修繕や大道具・小道具の制作など裏方も担当。子供から大人までを対象にした地歌舞伎の伝承教室を開講し、後継者育成に力を入れています。国内のみならず、コロナ禍前には米国・ハワイ大学での歌舞伎授業、イタリア、ドイツ、チェコでの音楽交流も展開。地域文化への貢献が認められ、2021年にはサントリー地域文化賞を受賞しました。

三味線の弦やバチについて説明する小栗さん 三味線の弦やバチについて説明する小栗さん

講演で小栗さんは「地歌舞伎に関わって今年で51年目。人生の3分の2を地歌舞伎で過ごし、その魅力にどっぷりと漬かってきました。文化とは何かというと人間の精神活動の成果です。文化を作るのも、文化を動かすのも皆さん、そして文化を駄目にしてしまうのも皆さん。私は江戸時代の歌舞伎と語り合いながら、その文化を皆さんに伝えていきたい」と語りました。

平安時代の「梁塵秘抄」から「遊びをせんとや生まれけむ」「舞え舞え蝸牛(かたつむり) 舞わぬものならば 馬の子や牛の子に 蹴させてん」の歌詞を引用して芸能の歴史を紹介。「かつて芝居小屋には神様が降りてくるとされた。人々は芝居、芸能、祭りを通じて交流し、お金を回し、地域の経済を活性化してきた」と指摘しました。

岐阜県には歴史ある芝居小屋が9軒あり、全国最多の32の保存団体が活動し、地歌舞伎が日本一盛んな県と言われます。東農地方をはじめ各地に残る芝居小屋では江戸時代から伝わる演目や振付が今も受け継がれています。小栗さんは「岐阜で地歌舞伎が盛んなのは、どこよりも衣装が大事に残されてきたことが大きい」と話し、貴重な衣装をスライドで紹介。江戸時代の遊郭、大奥、芝居小屋の色鮮やかな衣装を映し出して解説しました。

さらに小栗さんは太棹(ふとざお)と呼ばれる三味線で歌舞伎の「八百屋お七」を実演しました。お七という八百屋の娘が恋人を救うため、法で禁じられた火の見櫓に登り、半鐘と太鼓を打ち鳴らす悲恋物語。「~またひとしきり降る雪に 太鼓を打つ 袖打ち払う のき払う 踏みまよう~」と情感たっぷりな弾き語りを披露し、会場から大きな拍手が送られました。

小栗さんは「歌舞伎は日本のミュージカルで、江戸時代の庶民の芸能。私はそれを次世代に伝えたい。皆さんの中で歌舞伎をやってみたい人がいたら、私のところにぜひ来てほしい。全部教えます」と呼び掛けました。

講演後、会場から多くの質問があり、加茂郡坂下町で地歌舞伎の出演経験がある女子学生は「小栗さんが一番難しいと感じた役柄は」と質問。小栗さんは「伽蘿先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」の乳母・政岡の役。殿様を守るために自分の子供を犠牲にし、涙をこらえて背中で泣く芝居が最も難しかった」。男子学生の「これまでの活動で一番良かったことは」との質問には「伝承教室で子供たちに歌舞伎を教えている。その中から女性二人が地元で就職し、地歌舞伎を続けてくれることが一番うれしい」と答えました。最後に教職員の地歌舞伎ファンから後継者育成について問われると、「私は給料をすべて地歌舞伎につぎ込んでいるが、資金的なこともクリアしないと後継者育成は難しい」と厳しさを認め、「学校行事に歌舞伎公演を取り入れるなど、教育の場で文化を伝承する機会を増やすことも良い試みでは」と答えました。

三味線で「八百屋お七」を弾き語る小栗幸江さん 三味線で「八百屋お七」を弾き語る小栗幸江さん
「一番難しかった役柄は」と質問する女子学生 「一番難しかった役柄は」と質問する女子学生

                                                                                    (文責:碓井 洋  写真:野口 晃一郎)

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