第16回子ども未来セミナー開催報告

今、求められる保幼小連携の在り方とは? ~連携の「本質」を問う~

 2月26日(土)、ZOOMウェビナーにて第16回子ども未来セミナーが開催されました。コロナウイルス感染拡大防止のために遠隔開催となりましたが、県内外の保育士・幼稚園教諭及び本学の学生など120アカウントでの参加がありました。中には、幼稚園単位でお申し込みいただき、職員全員で視聴いただいた園もありました。今回は、基調講演の講師として元松山東雲短期大学教授の吉村真理子先生、総括講師としては愛知教育大学学長の野田敦敬先生にお話をいただきました。

吉村先生の基調講演からは、幼児教育の本質についてお話をいただきながら、育ちや経験が小学校以降へとつながっていくということについてお示しいただきました。幼児期の遊びは小学校以降の理論の厚みを、体験を通して学んでいるということを、具体例を通して語られました。子どもの発達課題に寄り添いながら、本当に子どもがやりたいことが実現できる環境を作ること、自分の保育計画に固執せず、子どもの今に合わせて柔軟に保育を変えていくことの重要性について訴えられました。最後には保育者・小学校教諭、それぞれにメッセージも送っていただきました。

4人のパネリストの皆様からは、目の前の子どもの「今」が充実しているかを捉えていくことが大切であり、子どもの育ちを支える上では「子どもが“育つ”」と信じることが一番であること。教科をより良く学ぶための保育ではなく、保育園が大好きという子どもを育てる中で「生き抜く力」を育てることが重要であり、それは「日々の保育を大切にする」ことが一番であること。小学校1年生が0からのスタートではなく、生活科という教科が幼児期に育まれた「教科につながる育ち」と「生きる力」をしっかりと受け取め、これからの学校生活にさらにつなげる役割をしているため、その質を大切にすることなどが訴えられました。また、小学校から幼児園に異動となった先生からは、小学校教育と保育の違いから、子どもや育ちを見る目が変わったこと、また、その学びを小学校教員として戻った際も役立てたいとの話がありました。議論の中では、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿などは評価の材料としてではなく、保育現場と小学校現場が互いに語り合うための「共通言語」としての役割として捉えることなどが示され、それぞれの現場が子どもの育ちを信じることの重要性について再度語られました。

野田先生の総括では、「やりたい」「したい」という気持ちを大切にすることや、「連携」と躍起にならず、しっかりと普段の保育・教育を大切にすることについて語られました。また、卒園児から保育園に届いた手紙が紹介され、「温かな保育者」という存在についても、保幼小連携には欠かせないことが訴えらえました。「遊びと学びは違わない」というメッセージは大変心に響きました。

今、保育現場で子どもと日々向き合い、行っている先生方の保育は間違っていないということを改めて感じました。連携においては目の前の子どもの育ちを信じることが重要です。今回のセミナーは、これからも日々を大切に、自信をもって現場で保育を行ってほしいというエールのようにも感じられました。本学教育学部では次年度より、保幼小連携に強い教員・保育者を養成するカリキュラムへと変わります。子どもの「今」を大切にし、日々の保育を大切にできる養成を、引き続き地域の保育現場の先生方とともに行っていきたいと思います。

パネルディスカッションの様子1 パネルディスカッションの様子1
パネルディスカッションの様子2 パネルディスカッションの様子2