経営学部

「現代マネジメント研究」 第6回 小倉真治氏 講義

2018.06.19

2018年度 中部学院大学・シティカレッジ各務原/関 公開講座

第6回「組織論から考える病院経営」
岐阜大学医学部附属病院 前病院長・医学博士 小倉真治氏

中部学院大学・中部学院大学短期大学部などがその構成員となっている「学校法人岐阜済美学院」は、2018年に創立100周年を迎えました。

これを機に、経営学部の前身である短期大学部経営情報学科時代から十数年間の伝統を誇る「現代産業研究」を新に「現代マネジメント研究」と改称し、全学的な選択履修を可能にするとともに、シティカレッジ関の皆様にも参加いただけるよう生まれ変わってスタートしました。

小倉真治氏

6月19日(火)、今年度第6回の「現代マネジメント研究」を開催し、講師を岐阜大学医学部附属病院前病院長の小倉真治医学博士にお願いし、経営・教育・スポーツ健康科学部生に加え、リハビリテーション学部看護学科の学生諸君、シティカレッジ関係者など約250人が拝聴しました。
氏は、4年間お務めになられた附属病院長をこの3月に退かれ、現在はその設置・運営に力を尽くしてこられた「高次救命治療センター」のトップとしてご活躍中です。

病院長としてご在任中の4年間の、氏の病院経営戦略の成果を端的に物語っているのは、何といっても大学全体の収益に果たした附属病院の役割です。
就任された平成25(2013)年、病院の営業収益は185億円でしたが、平成29(2017)には218億円に伸び、かつて全国ワースト5といわれた病院経営をトップ3にまで引き上げたのです。
そこには、揺るがない自信に満ちた病院長のリーダーシップのもとでの、患者も職員も、すべての関係者を満足させる経営哲学がありました。
このことは4年間の「職員満足度の上昇」と「入院患者数の増加」の調査結果でも明らかになっています。まさに『ESなくしてCSなし』(職員の満足なしに顧客の満足はない)の実現です。

さて、氏が就任当時に掲げた附属病院の在るべき姿は「最高のサービスを患者に届ける最高の病院の確立」でした。組織のマネジメントは、この哲学の元にスタートしたのです。

病院には医師、看護師、薬剤師はじめ、組織を形成する多くの従業員がいますが、氏はステークホルダー(註:利害関係者)に注目します。患者、市民、大学本部などの直接的なステークホルダーや従業員の家族、労働組合、地域社会などの間接的ステークホルダーです。

ステークホルダーのことは日常的に認識が難しく、普通はそこまで思いが届かないのですが、氏はメディアへの対応を大切にすることによって、「病院長経営戦略室」を中心とする経営改革に上乗せする波及的効果を促したのです。

小倉真治氏

さて、氏が重視したのは、なんといっても附属病院の存在目的です。
ステークホルダーを含めて、病院に関わる人たちの「病院への思い」は千差万別で、そのまま放置すれば、そこにあるのは「単なる人の群れ」に過ぎません。
この群れを「組織」にまで昇華させるのが「命令と役割」です。命令の権限と、役割を全うする責任とを一体化して組織化するのは「共通の情報環境」だというのです。

氏は秀吉や信長、帝国陸海軍などの組織管理を比べながら、現代におけるリーダーシップ論を展開します。共通の情報環境が意識されていないと、機能体の共同体化や過剰適応、成功体験への埋没などが生まれ、やがて組織は崩壊します。
このような意味において、トップの役割というものは、組織を考える上で絶対的なものであることがわかります。

講演の様子

小倉真治氏

トップに求められる能力は、説得力、知力、肉体的耐久力、自己制御能力、持続する意思などさまざまですが、必要なのは一人のライオンであって百頭のライオンではありません。
一頭の優秀なライオンがいれば、場合によっては百頭の羊をもってでも事が足ることがあるのです。「ヤマト運輸の教え」では、1976年からの25年間で、従業者数18倍、車台数12倍に対し売り上げを3万倍に伸ばしたことを示しています。発想の大切さを教えています。

トップの発想についていえば、岐阜県地域医療総合会議で話題になった、脳卒中、呼吸器疾患の増加に対応すべく、高次救命治療センターに創設したのが「ドクターヘリ」「ドクターカー」でした。ドクターカーについては、病院で救急車を待ち受けるのではなく、救急医師が消防本部に待機して救急車に同乗し急患に対応することを考えました。従来、急患の連絡から措置までに要した時間平均9分が、2分に大幅短縮されたのです。

氏は、このようにして附属病院全体の経営改革を進めて来られました。
聖域なき経営改革のために立ち上げた病院長経営戦略室に「カイゼン」を世界に普及させた人材を得て、病院長特別補佐とし、ボトルネックの解消に取り組んで来られました。

駐車場の増設、Co2削減に繋がるESCO事業、ワンストップ入院、検査・会計待ち時間短縮から「院長ドラ焼きの販売」、コーチング研修、ガーデンパーティーの実施など、「院長の愉快な仲間たち」が活躍する岐阜大学医学部附属病院。
新たな歴史が始まる予感がする高次救命治療センターに益々期待が高まりました。

(写真:野口晃一郎、文:今井春昭)

ページの先頭へ戻る