経営学部

「現代マネジメント研究」 第6回 日比野克彦 講義

2017.07.05

2017年度 経営学部・シティカレッジ各務原/関 公開講座

第6回「ナンヤローネ!」
岐阜県美術館館長・東京藝術大学美術学部長/教授 日比野克彦 氏

日比野克彦氏

8回シリーズの第6回は7月5日(水)、岐阜県美術館館長で東京藝術大学美術学部長・教授の日比野克彦氏をお迎えして、『ナンヤローネ!』と題してご講演いただき、経営・社会福祉の学生諸君のほか、市民の皆様方など約200人が拝聴しました。

氏はまず、「何を学んで、どうアクションを起こすか」が今日のテーマである。私は、社会の中に"アート"が機能するような仕組みを作りたいと考えている。」と語りかけました。

氏が最初にスライドで示されたのは、「人類最初の表現」とされた3点の絵画(壁画)です。スラヴェシ(セレベス)島の洞窟(インドネシア)・ショーヴェ洞窟(フランス)・ラスコー洞窟(同)に残された、動物や人間の手の形で、いずれも1.5万~4万年前の作品とされているものです。

これらは、光が全く届かない漆黒の闇の中で描かれたと思われます。氏は「うまい!!」と実感すると同時に、実際に洞窟に入ったときの、暗闇における自分と洞窟の壁との距離感、壁に触れる自分の身体の質感などを通じて、「暗闇の中でなぜ絵を描いたのか」に行き当たりました。真っ暗闇の中だったからこそ描かずにおれなかった当時の人々の心に、何万年という時空を超えて我々が共感できる、それが美術だと話しました。

私たちは、美術を教える先生も子どもも、小学校やそれよりも前から、他人と違うことはいけない、照れくさい、を身につけ、いつの間にかみんな同じ答えを求めるようになってしまいました。「自由に描いていいよ」と言われるから一生懸命描いたのに全く評価されない世界に何の疑問も持たなくなっているのです。

氏はそこで、改めて美術の持つ意味を問います。ラスコーの洞窟画も、現代美術も、障碍を持つ人の作品も、「人間が本来持っている力」という観点からすれば「差を感じない」と。

そして、日本財団アール・ブリュット美術館合同企画展『TURN/陸から海へ(ひとがはじめからもっている力)』は、氏の監修により2014年11月から2015年9月にかけて、京都の「みずのき美術館」などで開催され、大好評を博しました。

この合同企画展や、その後のリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックでの"TURN in BRAZIL"を機に、2015年、"東京2020オリンピック・パラリンピック"の文化プログラムのリーディングプロジェクトとして脚光を浴びている"TURN "とは何でしょうか。

"TURN"は当初、多くの健常者と障害者が交流し、芸術文化を創造・体験する「障害者アートプログラム」として提唱されましたが、これからの社会が真に目指すのは、障害者、健常者という2通りの人間の交わりではなく、多くの人間一人ひとりが異なる「その人らしさ」を持っていることに気づき、尊重することのできる、より豊かな関係性の創造であると強調されました。

日比野克彦氏

日比野克彦氏

日比野克彦氏

"TURN"の根幹をなすのは交流プログラムですが、私たちが誤解しやすい、アーティストによる障害者施設への表敬訪問や、講師となって療育の一環を担うのが交流なのではなく、出会いや交流によって相手との相互作用が起こる瞬間を探し続けるプロセスを指しています。従ってそこからは、無限に近い「TURNフェス」や「TURN LAND」が生まれてくることが期待されています。

「福祉の場を「ひらく」」、「まちに新しい場を「つくる」」発想は、さらに"DOOR"(Diversity on the Arts Projectの愛称)という人材養成プログラムとして、2017年度から東京藝術大学の履修証明プログラムで開講されています。マイノリティーのコミュニティの中にある多様な価値を芸術に視点で見いだしていく人材を育て、潜んでいた価値観を社会に発進して、それを次世代の新しい社会基盤とするという氏の哲学に共感を覚え、敬意を抱いた参加者がとても多かったと感じました。

(文:今井春昭、写真:今井信一・野口晃一郎)

注:アール・ブリュット美術館:福祉、美術、建築といった領域と、障害の有無を超え、才能豊かな創造と多様な価値観に出会う地域に親しまれる場を目指す場所。(日本財団)

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