各務原シティカレッジ

松沢哲郎客員教授の公開講座を開催しました

チンパンジーと人間の思考の違い「人間は絶望もするが希望も持てる」

中部学院大学公開講座「比較認知発達論」が7月9日、各務原キャンパスで行われ、チンパンジー「アイ」の研究で知られる、京都大学霊長類研究所所長で本学客員教授の松沢哲郎氏が講演しました。
松沢哲郎先生 講座に聞き入る受講者ら

テーマは「人間とは何か」。これまでのチンパンジー研究を紹介しながら、チンパンジーと人間を比較し、「生活史」「人間の親子関係の進化的基盤」「チンパンジーの社会的認知発達」「思考」の4項目を挙げました。
チンパンジーは約5年に一度子どもを産み、長い間授乳して、母親一人で育て上げて、次の子どもを育てるのに対して、人間はすぐに次の子どもを産み、離乳食を与え、家族や地域の人などみんなで育て上げる特性を紹介しました。その上で、寿命が50歳といわれるチンパンジーは6回ほど子育てのサイクルを繰り返すため、おばあちゃんが存在しないのに対して、人間は、母親が子どもを産まなくなってからも「おばあちゃん」として子どもを育てる―という違いを示しました。
人間は仰向けでいられるため、姿勢が安定していることを解説しました。ほ乳類では、子が親にしがみつくようになり、親が子を抱くようになり、ホミノイドと呼ばれるヒトと類人猿に進化すると、目と目が向き合うようになったことに触れました。その上で「人間は直立歩行するサルである」という持論を展開。ヒトに分類されると、子どもは仰向けで辺りが見回せるため、見つめ合うコミュニケーションが生まれたこと、また、母親を呼ぶようになり、身振りや表情を通じて、意思の疎通が図れるようになったことなどを話しました。
チンパンジーは、行動を見ただけで他者を理解できることを紹介しました。生後2カ月のチンパンジーが微笑む事例では、チンパンジーの進化において4段階あることを示した上で、見つめ合ったり、ほほえみ合ったりする「インターラプション」にはじまり、一緒に歩いたり、同じものを食べたりして経験をともにする中で、「真似る」という行動が生まれ、相手の気持ちがわかるようになることを伝えました。
「親は手本を示し、子どもは真似るという行動から、チンパンジーは『教えない教育』である」と指摘し、「人間は、大人が手を添えて教えたり、子どもが大人に関心を示したり、『教える教育』である」と比較しました。
今回は新たに「人間とチンパンジーの思考の違い」を紹介しました。チンパンジーの子どもの記憶力が人間の大人に比べて圧倒的に優れているという研究から、「チンパンジーは目の前にあるものを見ている」と解析。学生が寝たきりのチンパンジーを介護した時の話に触れ、「人であれば、明日のこと、1年後のことを考えると絶望するが、チンパンジーはまったく憂いていなかった」と話し、「今を生きているチンパンジーに絶望する理由がない」と語りました。一方、人間については「ほかの動物と違い、目の前のものを別のものに置き換えて記憶する」という特性があることを示し、「人間は絶望することもあるが希望を持つこともある」と締めくくりました。

講演には学生をはじめ、シティカレッジの受講生、市民ら約250人が受講し、熱心に耳を傾けていました。松沢先生など京都大学霊長類研究所の研究グループによる講義は後期も予定されており、市民の皆さんも受講できます。

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